出発の朝は雨の音で目が覚めた。アラスカの天気はめまぐるしく変わるので、天気予報を見てもあまり当てにならない。
今回のHumpy Creek釣行の参加者は、私とGaryのほかに、私の妻と息子、友人の子供たちの合計6名だ。ランチを作ったり子供たちのパッキングを手伝ったりで時間が過ぎ、ホーマー・スピットのハーバーに着いたのは待ち合わせの
引き潮が始まらないうちに向こう岸に着かなければならない。私たちは大急ぎで荷物を船に積み込み出船した。
Humpy Creekまでは、スピットからWater Taxiで約30分だ。いつの間にか雨は止んでいた。船は波もなく静かなカチェマック・ベイを進んでいった。Homerの町はどんどん遠ざかり、それまで遠くにあるように見えていたグルーウィンク氷河が青みを増して迫ってきた。氷河に近づくにつれ、水の色は澄んだ青から乳白色に変っていった。
この氷河を通り越して間もなく、船はスピードを緩め岸に近づき始めた。水が濁っていてそこが全く見えない。そして、微かに船底が水底に擦れる音がした。「さあ着いたっ! 早く降りなきゃ潮が引き始めて座礁しちゃうよ!急いで!」と船長にせかされ、あわてて船から下りるべく船首に向かった。船長は手際よく開閉式の階段を水に降ろし、私たちは順番に水の中に降りて行った。ウェーダー(ゴム長)をはいているとはいえ、氷河の濁りのせいで全く水深が読めず、階段から降りて最後の一歩を踏み出すのにはちょっと勇気が必要だった。
遠ざかる船の音が消えると、寂しいくらいに静かだった。対岸のHomerと私たちをつなぐのは、辛うじてつながる携帯電話だけ。新しい釣り場への期待より、不安の方が強くなった。「一体、こんなところに来て、俺たちは何やっているのだろう・・・もし熊に襲われても、誰も助けてくれない。」心が引き締まる思いで私たちは上流へと歩き始めた。(続く)


